ユーザーインタビュー

 今回は、長年研究センターをご利用いただいている、九州大学の巽先生と青山学院大学の賈先生にお話を伺いました。




 

1.日頃、どのような研究をされていますか。

巽先生
 セルロースの研究をしています。農学部の森林系に所属していますので、木から取れるサスティナブルな資源であるセルロースを用い、これを材料として有効に利用することを研究のスタンスとしています。セルロースからゲル、繊維、フィルムなどの材料を調製し、その構造と物性の相関を調べています。SAGA-LSでは、シンクロトロン放射光を用いて小角X線散乱(SAXS)測定を行い、これらの材料の数10〜数100 nmオーダーの構造を検討しています。一方、物性については、研究室所有のレオメータを用いてレオロジー測定を行っています。最近注目されているセルロースナノファイバーも扱っており、そのネットワーク構造と物性の関係を調べています。

賈先生
 私はフラットパネルディスプレイの透明電極、高性能薄膜トランジスタ(TFT)、熱電素子及び光触媒デバイスなどへの応用に向けて、物理的気相成長法として工業分野に幅広く利用されているスパッタ法を用いて、様々な機能を持つ金属・無機薄膜材料を合成している。これら薄膜材料の物性評価ならびに結晶構造と物性の相関性を中心に研究を進めている。さらに、薄膜における欠陥構造による有機EL素子、有機太陽電池やTFT素子の性能への影響について研究している。

2.当研究センターご利用のきっかけを教えてください。

巽先生
 九州大学に赴任直後、九州シンクロトロン光研究センター主催の研究成果報告会を拝聴したのがきっかけです。外村彰先生の講演だけが目当てだったのですけど(失礼!)、センターの方のお話を伺って「これは使わない手はない!」と。以来、10年間、毎年利用させていただいています。九州大学(福岡市)から日帰りで利用できる利便さも魅力ですね。

賈先生
 2014年に貴研究センターに所属している岡島敏浩様が青山学院大学・無機薄膜材料研究室に訪問した時に、広域X線吸収微細構造(EXAFS)という解析手法を紹介していただき、アモルファス薄膜の構造解析または多結晶薄膜中の欠陥構造解析に大変有用であると感じた。その後、研究室の教授と岡島敏浩様と相談し、Sn添加TiO2薄膜のスパッタ成膜において薄膜の成長過程やSn添加の幾何構造の解明に関して、共同研究を進めることになり、貴研究センターの利用を始めた。

3.シンクロトロン放射光を使われた感想はいかがですか。測定手法など含めて教えてください。

巽先生
 京都大学在職時は、学内ラボ所有のSAXS装置を利用していました。これも素晴らしい装置だったのですが、シンクロトロン放射光を利用できるようになって格段に効率が上がりました。わたしたちは溶液あるいは分散液のSAXS測定をすることが多く、測定に時間がかかります。その点で、シンクロトロン放射光を用いると測定時間が短くて済むので助かっています。さらに、SAGA-LSの設備は毎年のようにバージョンアップされており、10年前にイメージングプレートを暗室で読み込んでいた頃から思うと隔世の感があります。

賈先生
 シンクロトロン放射光を用いた広域X線吸収微細構造(EXAFS)によるアモルファスの局所構造の決定は非常に有力な武器だと考えている。現在、原子配列の周期性がないため、アモルファス構造を持つ材料の物性に関した物理理論の構築が極めて困難である。シンクロトロン放射光を用いて、ある物性値(電気・光学特性など)の変化に伴ってアモルファスの局所構造がどのように変化するか決めることができ、これは将来的に理論発展の基礎的な実験データになると考えている。

4.貴機関におけるシンクロトロン放射光利用の位置付けを教えてください。

巽先生
 シンクロトロン放射光利用がなければ成り立たないですね。年3回の利用をいつも楽しみ(励み)に、普段のラボでの研究をしています。セルロースのような生物由来の材料は、分子鎖が集まってナノサイズの微小繊維や分子集合体を形成し、さらに集まって大きなマイクロサイズでの構造体を形成(階層構造形成)するものが多く、さまざまな空間スケールで構造を検討できるSAXS測定はまさにうってつけです。「どのようなメカニズムで分子が集合するのか」という基礎研究から、「分子の集合状態を制御した構造体の構築」という発展的研究まで、シンクロトロン放射光利用によるSAXS測定で研究できるところが魅力です。

賈先生
 薄膜の結晶構造や欠陥構造は薄膜の物性に大きく影響しているので、多結晶薄膜中の欠陥構造もしくはアモルファス構造を持つ薄膜材料の局所構造の解析を主に行っている。

5.研究センターへのご要望、今後の抱負などお聞かせください。

巽先生
 センターの方々(BLスタッフの方々のみならず、利用企画課の皆さまにも)には、いつも良くしていただいています。厚く御礼申し上げます。こちらの無茶な(?)要望(小角と広角を一緒に測りたい、など)にも、「なんとかしましょう」と対応くださり、感謝の念に堪えません。また突拍子もない測定を提案するかもしれませんが(すみません…先に謝っておきます)、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
 セルロースは、古くて新しい、まさに温故知新的材料です。有史以前から人類はセルロースを利用していますがまだまだわからないことが多く、この素晴らしい自然からの贈り物の“なぞ”を少しでも解き明かしていければと思っています。

賈先生
 私はアモルファス酸化物薄膜の構造解析に興味を持っている。アモルファス酸化物薄膜において、原子配列には周期性がなく、XRDなどのような手法が適用できず、構造解析手法が非常に限られている。今後に、貴研究センターのEXAFSやIn-situ XRDなど測定装置をできるだけ多く利用し、様々なアモルファス状態の薄膜材料の局所構造を決め、電気特性や光学特性など物性との相関を解明し、新規機能性材料の材料設計指針を構築していきたい。

研究を進めるうえでのスタンスやポリシーなど、一言お願いします。

巽先生
 自然が示す“かたち”には意味がある。

SAGA-LSでセルロース繊維をSAXS測定した研究成果が、
平成28年度 繊維学会
秋季研究発表会でポスター賞を受賞しました。


 研究室での試料調整風景。

賈先生
 研究において、大胆な発想と緻密な論証が私の座右の銘である。考えすぎずに、手を動かすことがまず大事で、実験に没頭する時に常に研究の目的が何か、何が新しいかについて考える。

 実験中の賈先生

♡インタビューにご協力いただき、ありがとうございました。

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