所長挨拶

 

公益財団法人佐賀県産業振興機構
九州シンクロトロン光研究センター
所長 妹尾 与志木

 

 当センターは2006年2月に産声を上げて以来、16年が経過いたしました。現在計画中を含めると国内9つの機関が当センターと同様なシンクロトロン光利用研究施設を有していますが、学術に対する貢献と並んで産業振興も大目的とする施設であること、さらに地方自治体が直接管理運営する施設であることの2点は当センターが日本で最初でした。設立の目的の最初には「地域産業の高度化と新産業の創出」が謳われています。
 当センターの活動そのものは日本全国の利用者の皆様を対象にしておりますが、特にこの地域産業への貢献を行うため、様々な工夫を行い、努力を重ねてまいりました。ここ数年では、産業利用コーディネーターの活動をはじめとする県内産業への働きかけの活動が特徴的です。県内の各企業に訪問させていただき、いろいろなご相談を幅広く受けさせていただき、それらをやり取りの土台として、当センターの高機能の研究能力が活かせる部分については積極的に利用していただいております。県内の企業の皆様のための包括利用の制度も整備しております。
 
研究機関相互の連携も非常に重要だと考えています。どこの研究機関でも同じですが、研究機関は特定の領域に特化した研究領域とそれに関わる研究者を有しています。一方で、佐賀県内外に関わらず、産業支援を行うためには各研究機関の研究領域に限定しない広い領域をカバーする必要があります。工業技術センターや窯業技術センターのような県立の試験研究機関、佐賀大学や九州大学のような学術研究機関、また産総研九州センターのような公立の研究機関などと、常に密な関係を保ちながら、必要に応じて柔軟に協力関係を結べるような状況を作っておくことを念頭においています。
 
また、県内の農林水産関係の試験研究機関とは、シンクロトロン光利用を軸とした協力関係のさらなる進化を模索しようと考えています。佐賀県、九州ともにこれらは重要な産業ですが、自然界の複雑な産物を対象としてシンクロトロン光利用の研究を行うことは容易ではありません。今後、新たな共同研究体制などを構築して当センターにおける研究能力も上げ、未開拓部分の多いこれらの分野にすこしずつ切り込んでいく努力を行っていきます。

 このような状況で運営を続けてきて16年になりますが、現在当センターはひとつの節目を迎えております。
 ひとつの変革は光源部機器の老朽化に対処するための設備更新の開始です。最近センターの心臓部である光源部の機器について老朽化による故障が目立つようになりました。従来、ビームラインの測定機器の時流に応じた高度化等は随時行わせていただいておりましたが、将来にわたって安定的に光を出し続けるための措置として基幹機器の更新を計画し、本年度より開始することになりました。いずれの機器も汎用品ではないため作製に時間を要します。また、それらのセンター内への設置につきましては、当センターの研究員の手で慎重に機能最適化の作業を行う必要があります。すべての更新には5年程度の期間を見込んでおります。当センターにおいて機器更新作業が開始される来年度(2023年度)以降、利用者の皆様にもご不便をおかけする状況が発生する予定ですが、どうかご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。
 
もうひとつの変革は利用制度の見直し作業の開始です。現在の利用制度には、通常の利用形態である一般利用のほかに、県が利用料を補助している探索先導利用、先端創生利用などがありますが、これらの制度の原点はセンター創設後間もないころにまでさかのぼります。まだセンターの認知度が低く、多くの利用希望を生むための呼び水的な要素を持っていました。現在、もう一度原点に立ち戻って再構築を行う必要があると考えています。最近県内の企業の皆様に向けた包括利用の制度を作りましたが、これは、県内企業の皆様が当センターを利用するにあたってセンターの研究員がかなり踏み込んだ形で支援を行う制度です。このような制度も含めた体系的な制度構築を目指して作業を開始いたします。利用者の皆様に対しては大変恐縮ですが料金の改訂も含まれる予定です。現状の予定では、今年度(2022年度)に検討を行い、一定の周知期間を経て、新利用制度を施行する予定です。

 今年度はいろいろと大変な1年になりそうです。光源部の機器更新計画につきましては、計画をご承認いただくにあたり多くの皆様にご尽力いただきました。心より謝意を表します。今後の更新作業につきましては、ビームタイムの縮小などご迷惑をおかけする要因も含まれますし、利用制度につきましても値上げの側面も伴ってまいります。ただ、これらは当センターが将来にわたってより良いサービスを皆様にご提供できるようになるためのひとつ通過点とご理解いただければ幸いです。
 
今後ともご支援、ご協力をどうかよろしくお願い申し上げます。

 

2022年4月